食パンづくりの基礎知識の備忘録
家庭での食パン作りの基本
オーブンレンジを慎重したついでにホームベーカリーを捏ね専用として食パン型を買い本格的にパン作りをはじめました。今回は食パンの基本から学びたいと思い、勉強したことをメモしました。
食パンの材料
パン作りの基本的な材料についての基本情報です。
小麦粉
小麦粉はたんぱく質と灰分量で選びます。食パンに適する小麦粉はたんぱく質が12%、灰分両は0.38%〜0.4%の小麦粉です。スーパーで売られている強力粉は大抵12%のカメリヤだと思います。このカメリヤ粉(11.5%)やイーグル(12%)でも十分おいしい食パンが焼けます。たんぱく質13%を越えるゴールデンヨットやスーパーキングなどになると膨らみが大きくなりますので型の蓋は開けないといけません。高い粉をブレンドして12%に近づけるなら最初からカメリヤやイーグルを買ったほうがよいと思います。
たんぱく質
小麦粉に含まれるたんぱく質はグルテニンとグリアジンがパンを捏ねる過程で結合してグルテンができます。グルテンには伸展性がありたんぱく質の量によって生地の延び(膨張率)が違います。たんぱく質が少ないとボリュームが不足し、多すぎると表皮が硬くなってケービング(腰折れ)を起こします。
灰分
小麦粉を燃やした後に残るミネラル分を灰分と言い、灰分が少ないほど小麦粉の等級は上がります。一等粉の灰分は0.35〜0.45%で食パンづくりに使われます。二等粉の灰分は0.45〜0.6%で菓子パンによく使われます。
バイタルグルテン
小麦粉からグルテンだけを取り出したものです。小麦粉にたんぱく質が不足する場合にバイタルグルテンで補います。
イースト
パン生地の発酵に必要な酵母です。イーストはサッカロミセス・セレビシェという酵母で果物や穀物に付着している酵母を培養したものは天然酵母や自家製酵母、自然酵母などといいます。
生イースト
生イーストは耐糖性があるので砂糖を入れたパンに適合します。食パンにも砂糖を使いますので生イーストが適しています。生イーストは鮮度が大事で乾燥しないようにして冷蔵庫で保管します。
インスタントドライイースト
砂糖の配合が3%以下の場合に適しています。インスタントドライイーストを使う場合は砂糖のかわりにモルトエキスを加えてドライイーストの発酵を促進します。
水
通常は水道水を使います。水の温度は捏ね上げの温度にも影響します。
塩
塩は生地のべたつきを調整し味を調えます。塩は生地の弾力性を増し酵母を抑制する働きがあるので発酵をコントロールします。自然塩のミネラルがパンの味わいを深めます。
砂糖
砂糖はパンに甘味を加えます。5%以下で発酵を促進し5%以上は発酵を抑制します。日本の食パンでは5%〜7.5%の砂糖が加えられます。砂糖が多いと焼き色が濃くなります。山型食パンの場合は焦げやすくなりますので砂糖の量を減らします。
油脂
油脂は生地のべたつきやしっとり感に影響します。バターは油脂の中で最も風味がよく、マーガリンはショートニングに水とバターの風味を人工的に付けたものです。ショートニングは水分量が少なく無味無臭です。型離れをよくするときにも油脂を型に塗ります。
副材料
食パンにはドライフルーツやナッツ、雑穀などを混ぜます。
クルミとレーズン
クルミとレーズンの分量は粉の30%です。入れるタイミングはフロアタイム(一次発酵)の直前です。
全粒粉やゴマなど
小さな副材料の配合は粉に対し5%〜8%です。
型
食パンの形を整えるためのものです。材質によって熱の伝導率が変わります。
生地量の計算式
型の容積を生地膨張率で割ると型1台分に必要な生地重量が出ます。型の容積を比容積で割ると型1台分の生地重量が出ます。これを玉数で割ると分割重量が出ます。
膨張率
膨張率は12%の強力粉でパンを焼いた場合、膨張率は4.1倍〜4.3倍になります。
容積比
型の容積が生地の何杯か表す数値です。副材料を混ぜると容積比は小さくなります。
分割数量
型に入れる玉数です。2斤ならば4玉が目安です。
製パン用語
- 計量・・・材料を計ることです。
- ミキシング・・・生地を混ぜることです。ピックアップステージ(掴み取り段階)→クリーンアップステージ(水切れ段階、グルテンが形成されはじめる)→ディベロップメントステージ(結合段階、生地がまとまる)→ファイナルステージ(最終段階)という四段階があります。
- 捏上温度・・・グルテンを形成するのに最適な温度です。
- フロアタイム・・・一次発酵のことです。
- パンチ・・・ガス抜きのことです。生地が強化されます。窯伸びしやすくなります。必ず必要というわけではありません。
- 分割・丸め・・・生地にストレスを与えることのないようにします。ガスを潰さないようにします。
- ベンチタイム・・・分割・丸めの工程でガスが抜け生地にダメージが与えられます。このダメージやストレスを解消するために生地を休めます。生地の表面を乾燥させないようにします。
- 成形・・・やさしく形を整えます。手粉はなるべく少なくします。
- ホイロ・・・最終発酵のことです。36〜38度で湿度75%〜80%が最適です。角食パンは型の70%〜75%まで膨らませます。山型食パンは蓋の1cm下まで発酵させます。
- 焼成・・・パンを焼きます。角食パンの場合はスチームの必要はありません。
ストレート法
基本の食パンの工程です。ミキシング→フロアタイム(一次発酵)→分割・丸め→ベンチタイム→成型→ホイロ(二次発酵・最終発酵)→焼成
材料例
- 強力粉100%
- 砂糖6.5%
- 塩1.8%
- 脱脂粉乳2%
- バター8%
- 生イースト3%
- 水71%
調理のポイント
- 1次発酵は50分、ベンチタイム20分です。
- ホイロは角食で45分、山食で50分です。
- 上火180度下火210度で40分焼きます。
- 山型食パンの場合、厚いうちに表面にバターを塗ります。
中種法
生地の50%または70%などを先にフロアタイム(1次発酵)しておく方法です(中種の割合はいろいろです)。機械耐性があり焼成後の老化が遅いく素材そのものの風味はストレート法に劣ります。中種に砂糖を入れない方法と、入れる方法(加糖中種法)があります。
中種の分量
- 強力粉70%
- 生イースト2%
- 水42%
中種の工程
- ミキシング(捏上温度24度)
- フロアタイム(1次発酵、28度で40分)
最大限発酵して種落ちさせるほうがよい。
本捏
- ミキシング(中種と他の材料を混ぜ、途中でバターを加える、捏上温度28度)
- フロアタイム(1次発酵、28度70%で20分)
- 分割・丸め
- ベンチタイム
- 成形
- ホイロ(最終発酵・2次発酵、36〜28度75〜80%で角食は45分、山食は50分)
- 焼成(上火190度、下火210度で40分、山食は上火180度、下火210度で40分、山食は焼成後熱いうちにバターを塗る)
ポーリッシュ法
ポーランド由来の方法で種生地の水分量が多く柔らかいことが特徴です。水種法、液種法ともいわれます。
ポーリッシュ種
- 仕込み(捏上温度25度)
- 発酵(室温で2時間)
- 熟成(冷蔵庫で14時間〜16時間)
本捏
- ミキシング(捏上温度27度)
- フロアタイム(一次発酵、28度70%で50分)
- 分割・丸め
- ベンチタイム(20分)
- 成形
- ホイロ(最終発酵・二次発酵36〜38度75〜80%で45分〜55分)
- 焼成(下火180度、上火210度で42分、山型でスチームあり)
ポーリッシュ種の配合
- 強力粉20%
- 生イースト0.5%
- 水25%
本捏
- 強力粉80%
- 砂糖3%
- 塩1.8%
- 脱脂粉乳2%
- 生イースト2.5%
- バター4%
- ショートニング2%
- 水47%
湯種法
湯種生地にイーストを入れない方法です。
湯種工程
- 仕込み(ボウルを加熱しながら粘りが出て生地温度が75度〜90度になるまでミキサーをまわす)
- 熟成(冷蔵庫で16時間)
本捏工程
- ミキシング(長く捏ねるため低温ではじめる、捏上温度24度)
- フロアタイム(一次発酵、室温で40分〜45分)
- 分割・丸め
- ベンチタイム(20分)
- 成形
- ホイロ(最終発酵・二次発酵36〜38度75〜80%で50分〜60分、角型は型の70〜75%、山型は蓋の1cm下)
- 焼成(下火180度、上火210度で42分、山型は焼成後にバターを塗る)
湯種配合
- 強力粉20%
- 砂糖2%
- 塩2%
- 水40%
本捏配合
- 強力粉80%
- 砂糖4%
- 脱脂粉乳2%
- 生イースト2.5%
- バター4%
- ショートニング2%
- 水42%
オートリーズ法
オートリーズとは、塩とイースト以外の材料をはじめに3分ほどミキシングして20分〜30分ほど放置し、さらにイーストを混ぜて捏ね、最後に塩を加えて捏ねる方法です。バゲットの製法では捏ねたあとは発酵90分→(弱い)パンチ→発酵90分→分割・丸め→ベンチタイム30分→成型→最終発酵70分→上火240度下火220度で二十数分焼成という過程を経ます。
食パンづくりでおすすめの本
この生地でも参考にした内容が詳しく載っているおすすめの本をご紹介したいと思います。
見事な2斤ほどのパンのレシピが多数載ってます。この記事にも一部引用させてもらいました。すべて機械捏ねなので家庭向きではありませんが、パン屋がどのような工程を経て食パンを作っているのか伝わります。ホテルブレッドやフランス食パン、レーズンデニッシュ食パンなどのバリエーションも紹介しています。
食パンを極めたいという方におすすめの本です。プロがどのように作っているか参考になります。クックパッドのレシピだけでは不安な人にも。今は何でもクックパッドに載ってますからわざわざ本を買う必要はないと思いますがパンづくりに対する基本的な考え方を学べるのはこういった本が助けになると思います。
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